映画『水俣曼荼羅』で、水俣病訴訟について必死に戦っている人を知った。

はじめに

監督は『ゆきゆきて、神軍』『れいわ一揆』(私は名前だけ聞いたことがあるくらいだったけど…『さようならCP』だけ観たことありました!)の原一男さんで、上映時間はなんと6時間に及ぶ。

水俣病訴訟などを20年間追いかけて制作したらしい…詳しい概要は私より公式HPがいいです。

布教

とても勉強になった…すごすぎる…というのが総じての感想で、ほんと、多くの人に観てほしい。私は20歳で、正直水俣病についてはほとんど知らなかったが、知識不足で着いていけないということはなかった。というか水俣病について知るにはかなり適しているのではという。上映終わる前に観てーーーーー!!!!

6時間あると聞いて構えていたけど、原さん映画うますぎて、あっという間だった…他の作品も観なければ。ちなみに休憩は2時間毎に15分間挟まれた。

アップリンク吉祥寺、「伊良コーラ」が売ってたりでセンスいい!座席の座り心地もいい。腰痛くならなかった。私は辛口ジンジャーエールを途中に買いました。からうま

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内容に触れると、水俣病の訴訟、隠ぺい、汚染されてしまった土地をどうするか、といった話が原発事故後の構図とよく似ていて、人災という共通点を見出し、こうしたことはまた繰り返されるんじゃないかと感じた。

水俣病の訴訟という、言葉だけでは全く見えてこない、人生かけて戦った人の記録、そして裁判の重み、、なんて言っていいか分からない。でも知ることができて良かった。

水俣病について研究した人がかなり中心に据えられるんだけど、その人(浴野さん)のことがとても印象に残っている。

以下観た人向けの細かい感想

第一部

・1950年前後から水俣被害が続いていたと知り、気が遠くなる思いだった…
→最後まで見ると、こんな長い期間戦い続けたんだ…という、敬服と労いが混ざったような気持ち。
環境大臣時代の小池百合子氏と訴訟原告団のやりとりが映された。人の気持ちを外野が推し量ることはできないものの、かなり舐めているように見えてしまった。大臣たちが謝罪周りしたときは誠意が見えたように思うのに、何で三部みたいな官僚答弁になっちゃうんだろ…。
・神経抹消説のコペルニクス的転回が熱かった。浴野さんの研究に対する溢れ出る欲求みたいなの、憧れすぎる…。
・「52年判断条件」が覆ったときの国や県の対応、立場を守りたいのではという言葉、こうなってしまうということを覚えておく。
・ただ脳のホルマリン漬けを持って電車乗ったの笑った。
・裁判やるようになったから分かるけど、お金が欲しいんじゃなくて、正義のためなんだよな。買って入るお金なんて労力、弁護士代など勘案したら微々たるもの。→川上さんが「後世でこういうことがあった時のため…」で訴え続けたの本当にすごい。川上さんの後ろに映る部屋はボロボロだった。
・怒りっぽくなるって症状が、石炭粉塵による被害の一緒だと思った。これも人災…

第二部

・手帳を渡すから裁判した人には金を払わない!?!?ひどすぎるだろと思った。
・水銀を含んだヘドロを堤防の内側に埋め立てる、魚をドラム缶に詰め込んで地下に埋める、などして蓋をするような処理をしていた。そして、それが「いつか崩れたらどうなるのか?」「山中などに施設として作るべきでは?→壊れたらどうしようもない」、問題意識を持っている学者と国の水銀測定方法には溝がある、というような煮え切らないやりとりが、原発議論と全く一緒であった。人災は最後こうなるのか、と感じた。
土本典昭さんのドキュメンタリーで、株主総会で一斉に壇上に上がったシーンは良かったw
・元アナウンサーの人、オーラがあった…
→ 宮澤信雄さんといい、NHKアナウンサー仕事の傍ら、被害者支援に奔走した方らしい。素晴らしい…
・裁判の判決で間違いが露呈するからその前に承認する…
・「学問には蓋はできない」
・「国や県と戦うもんじゃない」→「悲惨だ、けれど喧嘩しなかったらもっと悲惨だった」
・「殺して先立とうと思うか」という質問にびっくりしたし、それに答えたのも驚いた。

第三部

石牟礼道子さんの「悶え神」というワードが印象に残っている。自分ではその苦しさを体験してないから、その分誰かの悲しみや怒りに悶えるひと、、「せめて悶え神になることはできる」。
大きな社会課題解決ができなくても、人と人との関係ということでいえば、これだって立派な行為である、のかも知れない。
・医学的進歩があれば、不透明な棄却も減るのかな…まだまだ終わっていない。